夕日の帰る場所へ

私は今日も生きる

1月31日の手紙 マリちゃんの話


カホちゃん

元気にしていますか



(イチゴの花)



寒い日が続きますが

そちらは寒くないですか?


カホちゃんは冷え症だったので

心配です。


あたたかくしていてね。










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『マリちゃんの話』(実話です)




小学校にあがったばかりのある日

浴室の扉を開けると

母が人形の頭にシャンプーを泡立てていた。


どうしたのと問えば

「燃えるゴミに出されていたの。

かわいそうだから拾ってきた。」と。


熱いお湯をかけられたせいか

人形の髪が絡まって固まっていたのを覚えている。






 マリちゃんと

一緒に部屋に いることには 抵抗があった。


それでも人形は 子供と一緒にいるもの。

と 母が どうしても 譲らなかったから


マリちゃんは私の部屋にやってきた。


横にすると目を瞑り

起き上がらせると目が開いた。


パッチリとした目は私の目を惹き付けると同時に、

何だかわからない不安な気分にさせた。






小学生になって直ぐ

新しい家に引っ越して


ほどなく

母がマリちゃんを拾ってきたから


高校を卒業するまで

毎日マリちゃんと同じ部屋にいたことになる。






マリちゃんは 私が専門学校に行き

さらに そこから 就職し


嫁ぐことになって 実家を出るまで

私の 部屋に 一人でいた 。






嫁ぎ先に 持っていく 荷物を 整理して いる時

やっと マリちゃんと 離れられると 思うと

ちょっと ほっとした。



しかし 母が これは小さい時から

あなたと 一緒に過ごした 人形なのだから


絶対に連れて行かなければ いけないのだと

荷物の中に 強引に 押し込んだ。





「これはお母さんが捨てられているのを

拾ってきた人形だよ」と、言っても


「何をバカな事を。

赤ちゃんの時から一緒にいる人形じゃないの!」と、怒り出す。


確かに赤ちゃんのころ、

横に寝かせられていた人形はあったが


それは引っ越す前に処分され

マリちゃんとは別の人形だった。


母にはマリちゃんを拾ってきた記憶が

全くない様子だった。





仕方ない……。





そういうわけでマリちゃんは

私の嫁ぎ先までやってきた。






特に凶悪な感じもしないが、

なるべくなら

見たくない気持ちでいっぱいだった。





無視はかわいそうかと思い

娘たちのお下がりの服を着せ

おままごとの時には仲間に入れるようにした。





娘たちがおままごとする時期が終わると

マリちゃんをどうしたらいいか悩んだ末、


大きなクマのぬいぐるみと一緒に

押し入れにそっと寝かせた。






それから約20年。


押し入れはマリちゃんが居ると思うと

開けたくなくて

ほとんど開かずの押し入れになっていた。






ちょっと離れていた所にネコと住んでいた長女が

その部屋に移ってくることになり




いらない物は断捨離する事になった。





とうとう見ないふりをしていたマリちゃんを

なんとかしないといけない。






私と長女は考えて

マリちゃんを近いうちに

人形供養に持って行こうかと相談した。





数日後


「お母さん、怖い夢見たよ」

長女が言うには



はじめは亡くなった妹の姿で出てきて

寝ている長女に馬乗りになり

首を絞めてきたそうだ。



長女が、「お前は妹じゃない」と見破ると

姿がマリちゃんに変化して


よくお菓子が買ってもらえない子どもがするみたいに

大の字に寝転び、

手足をバタバタさせて



「イヤだイヤだイヤだ!ここに居たいのに。

ネコまで来るんだ!私はここに居たい。

ここを動くなんてイヤだイヤだイヤだ!」と、


泣き叫び

大暴れしていたそうだ。







それを聞いた翌日

直ぐにお寺に人形供養に持って行き

手厚いお経をもらいお焚きあげしていただいた。


とても丁寧な供養だったから

マリちゃんはこの地上より

素晴らしい天上に行けたのだと思う。





今でもあの押し入れを開けるとき

もうマリちゃんは居ないのに

ちょっと緊張する私がいる。




長女の夢にはあれ以来

マリちゃんは出てきていないと言う。



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(モーニング食べるおじいちゃん)




(初めてカヌレ食べたよ!)



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